会社員が親・親族の介護または子の看護のために休まなくてはならないとき、どのような制度を利用できるでしょうか。「年次有給休暇」を取得するのも選択肢の一つですが、介護などで回数がかさんでしまい、私用で取得したいときに残日数が無い・・(欠勤扱いになってしまう)ということが考えられます。
そこで、取得目的を「介護」や「看護等」に限定した休業・休暇が育児介護休業法(※)で認められており、これらを活用することができます。(※正式名:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)
今回はその中で、年次有給休暇とは別に取得できる「介護休業」、「介護休暇」、「子の看護等休暇」の3つについて、それぞれどのようなときに使うものか、また運用上の注意点など、詳しく解説します。
各制度の全体像(比較表)
各制度の詳細をみる前に、まずは全体像を表で見てみましょう。

詳細は後述しますが、3つの制度の共通的な内容をみてみると、例えば対象労働者(=この制度を利用できる労働者)です。基本的には全ての労働者に保障されている権利ですが、労使協定で除外できる労働者の条件が認められています。これが「所定労働日数が2日以下の者」や「日雇労働者」です。
また、休業・休暇取得中の給与は、法律上は無給で問題ありません。会社によっては有給としているケースもあります。「無給だったら欠勤と同じでは?何の意味があるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、これらは法律で認められた制度ですので、例えば年次有給休暇を付与する際の「出勤率」を計算する際「出勤したものとみなす」必要があります。さらに、昇給や賞与等の査定において、これらの制度利用を理由とする不利益な取扱いは認められません。こうした点が欠勤とは根本的に違います。
これらの制度はいずれも、仕事と介護や子育ての両立を支援するための制度です。労働者がこれらを利用する際の手続き上のポイントは、制度利用をしやすくすることです。いずれも取得目的が介護などに限定された制度であるものの、休暇等を取らせるにあたって必要以上に証拠書類の提出を求めることはできません。
それでは、次に各制度の詳細をみていきましょう。
介護休業
概要
「介護休業」は、労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業です。
労働者自身が介護をするためというよりも、介護保険制度の介護サービスや育児・介護休業法の両立支援制度等を組み合わせて活用することで、仕事と介護の両立を図ることを目的とした制度です。すなわち、介護を必要とする家族を支える体制を構築するために、まとまった期間の休業をできるようにしたものです。
介護休業の取得可能日数は、対象家族1人につき3回まで、通算で93日分です。
介護休業期間に対しては、一定の受給要件を満たしたときは、雇用保険から「介護休業給付」として休業前の給与額のおよそ67%を受け取ることができます。
対象家族の範囲
対象家族(=誰を介護する場合に利用できるか)の範囲は以下の通りです。

名称が「介護」なので、親の介護が普通イメージされるかもしれませんが、子や孫、労働者本人の兄弟姉妹も対象となっています。
「要介護状態」にあるかどうかの判断
育児・介護休業法で定める「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態(障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む。ただし、乳幼児の通常の成育過程において日常生活上必要な便宜を供与する必要がある場合は含まない。)をいいます。ややこしいのが、介護保険法の要介護認定を受けていることが必ずしも要件ではないという点です。
さらに「常時介護を必要とする状態」は、厚生労働省において細かな判断基準が定められており、この基準に従って判断します。(判断基準は厚生労働省HPのリンクをご覧ください。)
運用の注意点
介護休業を希望する労働者には、休業開始2週間前までに書面で会社に申し出てもらいます。(様式は任意ですが、後述する「介護休業給付」の申請の際に添付書類として必要になります。)
制度運用にあたって会社は、すでに述べたとおり利用のハードルを上げないことが重要です。会社は、介護休業の取得を申し出た労働者に対し、対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類の提出を求めることができますが、これは「医師の診断書」等に限定せず、要介護状態にある事実を証明できるもので足ります。例えば就業規則において、介護休業等の申出に医師の診断書の添付を義務づけることはできず、証明書類が提出されないことを理由に休業させないという取扱いは認められません。
また、対象家族が要介護状態であるかの「判断基準」は、あくまで参考情報であることに留意します。この対象家族の状態を判断基準に厳密に当てはめることで、労働者の介護休業の取得が制限されないよう、介護をしている労働者の個々の事情を考慮し、なるべく労働者が仕事と介護を両立できるよう、事業主は柔軟に運用することが望まれます。
介護休業給付
実際に労働者が介護休業を取得すると、休業中は無収入になってしまいますので、会社は忘れずに介護休業給付の申請手続きをします(労働者が代わりに行うことも可能です)。なお介護休業給付を受けるには、受給資格として介護休業を開始した日前2年間に雇用保険被保険者期間が12か月(※)以上必要です。(※介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1か月とする。→雇用保険に加入し、給料を満額で12か月以上もらっていれば要件を満たします。)
介護休業給付の支給額は、介護休業開始前6か月間の給与総支給額の約67%です。
なお介護休業給付は、そもそも介護休業が仕事と介護の両立を図ることを目的としていることから、休業終了後も雇用を継続していることが前提となります。したがって、介護休業終了時点で退職を予定している場合などは受給できません。このようなケースでは、「親族の介護を理由とした離職」としての失業給付の受給を検討することになります。
介護休暇
概要
「介護休暇」は、労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護や世話をするための休暇です。介護休暇を取得するための、介護の状態や対象家族の範囲などの要件は、すべて介護休業と同じです。
また制度目的が「仕事と介護の両立を図ること」という点も介護休業と同じですので、介護休暇を利用しつつ、介護保険制度の介護サービスや育児・介護休業法の両立支援制度を組み合わせて活用することとなります。
介護休暇は、前述の「介護休業」と比べて短時間・単発の休みを取りたい場合に利用できる制度です。対象家族の介護や世話だけでなく、通院の付き添いやケアマネジャーとの打合せ等にも活用できます。
取得可能日数は以下の通りです。
・対象家族が1人の場合は、年5日まで。
・対象家族が2人以上の場合は、年10日まで。
なお令和3年からは、時間単位で取得することが可能となっています。
介護休暇を取得した日の給与は、就業規則で有給とする旨を定めていない限り通常は無給となります。
運用の注意点
労働者が介護休暇の取得を希望する場合、書面等で会社に申し出ます。年次有給休暇と同じ手続き方法とすることで問題ありません。
会社は介護休暇取得を申し出た労働者に対して、①労働者と対象家族の続柄を証明する書類、②対象家族が要介護状態にあることを証明する書類を求めることができます。ただし証明書類の提出を求める場合には、事後の提出を可能とする等、労働者に過重な負担を求める事にならないような配慮が必要です。
また介護休業と同様に、対象家族が要介護状態にあることの確認について、厚生労働省が示す「判断基準」に厳密にとらわれることで労働者の権利を制限することがないように、柔軟に運用することが求められます。
子の看護等休暇
概要
「子の看護等休暇」は、小学3年生修了までの子を養育する労働者が、1年度に5日まで(対象となる子が2人以上の場合は10日まで)休暇が取得できる制度です。
子の看護等休暇は、以下の場合に取得可能です。
- 病気、けがをした子の看護をする場合
- 子に予防接種・健康診断を受けさせる場合
- 感染症に伴う学級閉鎖等になった子の世話をする場合(子が感染症に罹患していなくても取得可能)
- 子の入園式、卒園式、入学式に参列する場合(※取得事由にこちらが加わったことで、正式名称が「子の看護等休暇」となりました。その前は「子の看護休暇」でした。)
昨今夫婦共働きが一般的になっていることも関係し、育児介護休業法では仕事と子育ての両立支援の措置が拡充されています。3歳未満の子を養育する労働者に対しては育児休業等や時短勤務、小学校就学前の子を養育する労働者に対しては時間外労働・深夜業務の免除が法的に認められていましたが、「小学3年生修了まで」を対象とする措置は、令和7年に初めて導入されました。
取得可能日数は以下の通りです。(日数は介護休暇と同様)
・対象となる子が1人の場合は、年5日まで。
・対象となる子が2人以上の場合は、年10日まで。
なお令和3年からは、時間単位で取得することが可能となっています。
子の看護等休暇を取得した場合の給与についても介護休暇と同様、就業規則で有給とする旨を定めていない限り通常は無給となります。
運用の注意点
労働者が子の看護等休暇の取得を希望する場合、書面等で会社に申し出ます。なお、子の看護等休暇の利用については緊急を要することが多いことから、当日の電話等の口頭の申出でも取得を認め、書面の提出等を求める場合は事後となっても差し支えないこととすることが必要です。
会社は取得を申し出た労働者に対して、申出に係る子の病気、けがに関する証明等、取得事由に該当することを証明する書類の提出を求めることができます。ただし、これも介護休業・介護休暇と同じですが、労働者に過度な負担をかけないよう配慮が必要です。
子の看護等休暇は、介護休業・介護休暇とは異なり「負傷し、若しくは疾病にかかった子の世話」を行う場合の、子の負傷や疾病の種類・程度に特段の制限はありません。例えば風邪による発熱など短期間で治癒する傷病であっても労働者が必要と考える場合には申出ができます。したがって、申出に係る子の負傷又は疾病の事実を証明する書類としては、必ずしも医師の診断書等に限定せず、購入した薬の領収書により確認するなど、柔軟な取扱いをすることが求められます。
以上みてきたとおり、子の看護等休暇は様々な事由で柔軟に利用できることが望ましいので、仕事と子育てを両立する労働者に対しては、半日単位・時間単位での付与や、年次有給休暇と組み合わせるなど、何よりも使いやすくなるような運用が求められています。
まとめ
今回は、家族の介護や子の看護などのために仕事を休みたい場合に、どのような制度が法律上保障されているか解説しました。いずれも、介護離職の防止など、仕事との両立を図るための制度です。
これらの制度は法律で認められた権利ではありますが、労働者に周知するという観点から就業規則に明記されていることが望ましいでしょう。すでに述べたとおり、厚生労働省としてはこれらの制度を労働者が使いやすくなるよう会社に対して求めています。
介護や子育てにかかわる制度は多様かつ複雑で、厚生労働省の管轄に様々な支援制度があります。仕事と介護・子育てとの両立のためには、今回説明した制度も活用しつつ介護保険の給付、育児に関する支援(助成金を含む)を上手に活用することが必要であり、そのためには会社から労働者への情報提供も必要です。
親族の介護などに直面した場合に自身で背負いすぎないためにも、主に厚生労働省のホームページなどで、休暇・休業制度だけでなく支援の内容や相談窓口を把握しておき、準備をしておくことが重要です。

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