遺族年金とは-家族のある会社員が亡くなったら-

表題のような事態は、あまり考えたくもないことかもしれません。しかし万が一であっても、誰にでもこのような可能性はあります。この時遺された家族への社会保障のひとつに、「遺族年金」があります。

本記事では「遺族年金」をテーマに、【配偶者がいる会社員】、【配偶者・子がいる会社員】、【子がいる会社員】に万が一のことがあったとき、遺族が受けられる保障について解説します。(なお本記事の「子」とは、18歳到達後の3月まで=高校生までの子を指します。)

今回紹介するパターンに、ご自身の状況を照らし合わせて大まかな受給見込額をつかんでいただければと思います。

遺族年金とは

まず「遺族年金」の定義を確認します。


遺族年金は、国民年金または厚生年金保険に加入している/加入していた者が亡くなったときに、その者に生計を維持されていた遺族が受けられる年金をいう。

遺族年金には「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、亡くなった者の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給される。

亡くなった者の年金の納付状況・遺族年金を受け取る者の年齢・優先順位などの条件をすべて満たしている場合、遺族年金を受け取ることができる。


このように、遺族年金は亡くなった者の年金加入状況、遺族の状況で受けられるパターンは様々ですが、今回はタイトルのとおり家族(配偶者・子)のある会社員(厚生年金に加入している者)が亡くなったときで、かつ亡くなった者および遺族がどちらも60歳未満であるケースについて解説します。

なお、いわゆる社会保障の「遺族年金」のなかには、労災保険の「遺族補償年金」というものがあり、これは労災事故(業務中の事故)で亡くなった者の遺族が受け取る年金ですが、これは根本的に違う制度なので、今回は労災による死亡ではないものとします。

遺族のパターンごとに受給できる種類・概算額

遺族年金は前述のとおり様々なパターンがあるため、一概に誰がいくらもらえるという話はできません。ただ今回のような「家族のある会社員が亡くなったケース」に対しては、ある程度見込まれる受給額を計算できますので、まずは遺族パターンごとの遺族年金の受給見込額を、表で示します。

※非常にざっくりした概算額であることをご了承ください。詳細は次の項目以降で解説します。

【遺族(遺された家族)のパターンごとの受給見込額】

配偶者のみがいる会社員が亡くなった場合

それでは、ここからいわゆる「子なし夫婦」(または「子がすでに18歳以上になった夫婦」)のうち、一方が亡くなってしまったケースの詳細をみていきます。

受給資格

遺族年金が発生するよくある事例の一つが、今回のタイトルのように配偶者のある現役会社員が亡くなってしまうケースです。会社員である間に亡くなるということは、【遺族年金とは】で確認したところの「厚生年金保険に加入している者が亡くなったとき」に該当します。

このとき遺族が「妻」であれば、①亡くなった当時生計を維持されていたこと、②妻自身の前年の収入が850万円未満であること、この二つを満たせば【遺族厚生年金を受給できます。イメージとしては、妻自身の老齢年金を受け取るまでの間は(再婚などしない限り)遺族年金を受給できます。これに【遺族基礎年金】は含まれません。遺族基礎年金はのちに解説します。

※「生計を維持されていた」とは、扶養されていたことまでは要求されておらず、「生計を同じくしていた=家計が同じ」で足ります。

一方遺族が「夫」である場合、妻の死亡時点で夫自身55歳以上でなければ受給権が発生せず、受給権が発生しても実際に受け取れるのは60歳から(60歳になるまで支給停止)になります。実質、男性の側が遺族年金を受け取ることがほとんど想定されていない制度設計といえます。これに対して将来的には男女間の差を解消する制度改正が予定されています。

受給額

次にこのケースの、遺族厚生年金の受給額です。これは亡くなった人の厚生年金加入中の年収によってかなり差が出るので、ここでは大体のイメージをつかむために、加入期間を通じて年収400万円程度の人が亡くなったものと仮定します。

【遺族厚生年金の受給額】

本体:約410,000円/年(死亡者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3)

加算:約620,000円/年(※)

(※)受給者が妻で、本人死亡当時40~64歳の場合のみ「中高齢加算額」として加算される。これは【遺族基礎年金】の代わりに支給されるものというイメージ。金額は、遺族基礎年金の4分の3相当額。

この事例では、亡くなった人は年金を受ける年齢ではありませんが、死亡者が「老齢厚生年金」を受けられるとした金額を基準に、その金額の4分の3となっています。「老齢厚生年金」の計算方法は別記事で解説していますので、よろしければこちらもご覧ください。

関連記事:老齢年金はいくらもらえるか

なお遺族厚生年金を計算するにあたり、死亡者の厚生年金の加入期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されます。このようなみなし計算が無いと、あまりにも金額が少なくなってしまうためです。

本事例に使用した遺族厚生年金の計算式を、参考として以下に記載します。

いつまで受給できるか

遺族厚生年金の権利が発生した場合、受給者が自身の老齢年金を受け取れるようになるまでは継続されます。ただし失権事由に該当した場合(再婚するなど)、その時点で遺族年金の権利は消滅します。

また遺族厚生年金は、受給者の年収要件(死亡当時年収850万未満であること)がありましたが、受給開始後は特に年収額などによって支給が制限されることはありません。また遺族年金は非課税です(課税所得ではない)。

配偶者・子がいる会社員が亡くなった場合

次に、配偶者と高校生以下の子がいる会社員が亡くなってしまったケースです。

受給資格

【①遺族が妻の場合】

配偶者と子(高校生未満)がいる厚生年金加入者が死亡した場合、遺族となる配偶者が「妻」であれば、①亡くなった当時生計を維持されていたこと、②妻自身の前年の収入が850万円未満であること、この二つを満たせば【遺族基礎年金】および【遺族厚生年金を受給できます。

子なし夫婦との違いは、子がいる場合は遺族基礎年金が発生することです。

【②遺族が夫の場合】

遺族となる配偶者が夫の場合、①亡くなった当時生計を維持されていたこと、②夫自身の前年の収入が850万円未満であること、この二つを満たせば【遺族基礎年金】を受給できます。加えて、夫が妻の死亡当時55歳以上であれば、【遺族厚生年金】の受給権が発生しますが、60歳になるまでは支給停止になります。この「夫に対する遺族厚生年金の制限」は、子なし夫婦の事例と同じです。

遺族が夫でも子がいる場合は遺族基礎年金が発生するので、遺族基礎年金とは子がいることに対して発生するものであると理解できます。

受給額

遺族基礎年金は定額である一方、遺族厚生年金は厚生年金加入状況によって金額が変わりますので、子なし夫婦と同様に加入期間を通じて年収400万円程度の人が亡くなったものと仮定します。

【遺族基礎年金の受給額】

本体:831,700円/年

子の加算額:1人目・2人目は239,300円/年、3人目以降は79,800円/年

【遺族厚生年金の受給額】

約410,000円/年(死亡者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3)

遺族基礎年金は、子の人数によって【本体+加算額】となります。また遺族厚生年金は、前述のとおりほぼ「妻」しか受けられません。

いつまで受給できるか

遺族基礎年金は、対象となる子がすべて18歳到達後の3月を迎えた(高校卒業した)ときに失権します。

妻が遺族厚生年金を受けられる場合は、再婚などの失権事由に該当しない限り、妻自身の老齢年金を受けられるまでは受給できます。

子のみがいる会社員が亡くなった場合

最後に、配偶者がおらず子のみいる会社員が亡くなったケースです。

受給資格

死亡した者に配偶者がいないため、子が第一順位となります。子が死亡者に生計を維持されていれば、【遺族基礎年金】および【遺族厚生年金】が受給できます。

なお、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には【遺族基礎年金】は支給されません。・・・第1順位となる子に、養子縁組などで親がいるケースなどが考えられます。

受給額

遺族基礎年金は、子の人数によって定額です。遺族厚生年金は、これまでの事例と同じく加入期間を通じて年収400万円程度の人が亡くなったものと仮定します。

【遺族基礎年金の受給額】

本体:831,700円/年

子の加算額:2人目は239,300円/年、3人目以降は79,800円/年

【遺族厚生年金の受給額】

約410,000円/年(死亡者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3)

いつまで受給できるか

遺族基礎年金、遺族厚生年金いずれも、対象となる子がすべて18歳到達後の3月を迎えた(高校卒業した)ときに失権します。

まとめ

今回は「遺族年金」について解説しました。遺族パターンごとの【遺族基礎年金】【遺族厚生年金】の組み合わせがややこしいので、最後にまとめておきましょう。

遺族年金は制度自体が非常に複雑で、今回ご紹介したケース以外にも、亡くなった者の父母が受給するようなケースや、そもそも国民年金加入中の者が亡くなったら、というケースもあります。

その中でも、家族のある現役会社員に万一のことがあれば、遺された家族は精神的なダメージとともに経済的な不安に直面することになりますので、このような事例に絞って解説しました。

生命保険などにも、死亡に備えた所得補償の内容を含むものも多くありますが、まずは公的な社会保障の中の一制度として「遺族年金」がどのようなものかイメージを持っていただけたら幸いです。

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