休職とは -病気欠勤等が長引いたとき-

「休職」とは、労働者が私傷病などの個人的事情で働けなくなったときに、一定期間雇用契約を維持したまま労働義務を免除する制度です。

本記事では、「休職」制度について概要とともに、労働者から診断書などが提出されたケースを想定した実務上の流れを解説します。

休職制度の概要

休職制度とは

休職制度とは冒頭で述べたとおり、労働者が病気などの事情で労務の提供ができなくなったときに、一定期間労働義務を免除することで、従業員としての身分を失わず、退職や解雇を猶予する制度をいいます。

就業規則のある会社であれば、ほぼ必ず休職制度がありますので、皆さんもご自身の会社の就業規則を見てみてください。

休職規定の一例は、以下のようなものです。



この規定例では、病気などで欠勤が3か月続いたときに「休職期間」に入り、その後6か月経っても復帰できない場合は休職期間満了により自動的に退職する、という流れです。(病気が治り、働くことができる状態になれば当然に復職となります。)

すなわち休み始めてから(本人から退職の申し出がある場合は除き)合計9か月間が経過しないと自動退職となりません。会社がその前に辞めてもらいたいと思うのであれば、「解雇」を検討することになります。解雇については別記事で解説しています。

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休職そのものは労働基準法をはじめとする労働関係法令に規制が無く、会社ごとに就業規則で定める内容を根拠に運用されます。何を休職事由とするか、または休職期間の長さをどうするかといった内容は、労使の合意に基づきある程度自由に決めることができます

ただし、解雇規制を免れる目的で定められたような休職制度は無効です。例えば、【業務上の傷病を事由とする休職制度】を設け、休職期間満了満了時に復帰できなければ「自然退職」とする、というような取扱いです。これの何が問題となるのでしょうか?

労働基準法第19条では、業務上の負傷・疾病による休業期間中およびその後30日間は、解雇が禁止されています。業務上すなわち労災事故は、通常会社が責任を負うとされているためです。これを休職と称し「休職期間満了なので自然退職」とするのは脱法行為ですので、労使トラブルが起きればこのような就業規則の規定は無効と判断されます。

なぜ休職制度が必要か

休職制度の意義を考えてみましょう。

本来であれば雇用契約において労働者は「労働の提供義務」を、会社はその対価として「賃金支払義務」をそれぞれ負っています。病気で働けないならば、雇用契約上の義務を果たせないため、そこで雇用契約を終わらせるという考え方があるかもしれません。

しかし一時的な病気休暇ですぐに解雇などをしてしまうのは、会社のためにも労働者のためにもなるとは思えません。会社にとってはせっかく育成した人材を一時的な病休で手放すことになり、労働者にとっては働けなくなったらすぐに雇用終了となれば経済的不安が非常に大きくなります。このような背景から、「一定期間、解雇/退職を猶予する制度」すなわち福利厚生としての意義があります。

また、もう一つ別の視点で考えます。例えばあなたが会社の人事担当者の立場になって、社員から医師の診断書(「●●の病状のため、●月●日まで就労不可と判断する」といった医師の証明)が提出され、休業を申し出てきたケースを考えましょう。

会社は医師の診断に逆らって働かせることはできないので、まずは労働者には療養に専念してもらうこととなります。しかしなかなか病状が改善せず、ずっと欠勤が続いたらどうしますか?

会社は出勤できない労働者をいつまでも雇っているわけにもいきません(出勤できない原因が会社にあるなら話は別です)。雇用関係が継続する限り、会社にも労働者にも社会保険料負担が発生し続けます。とはいっても、「いつどうやって退職させるのか、解雇するのか?」「そもそも今解雇して大丈夫なのか?」など、その都度迷ってしまいます。

この点、休職制度があればそれを基準にして労働者と退職時期の話し合いができますし、休職期間満了時点で復職できなければ原則自然退職となりますので、解雇のように労使トラブルになるリスクもありません。労働者の側からみても、休職制度があれば「いつまでに復職できなければ退職になる」というのがあらかじめわかることは、突然解雇を告げられるのとはわけが違います。

休職制度には以上のような意義があります。

休職の実務

それでは実際に労働者が休職に入る際の実務を確認します。

会社がやるべきことは概ね以下の通りです。

  • 病気欠勤の日数が休職事由に該当する日数に達したら、「休職通知書」を労働者に交付する
  • 1か月に1度など、定期的に病状の報告を求めるとともに、必要に応じ面談等を行う
  • 社会保険料や住民税を、会社の口座に振り込んでもらう
  • 休職期間が満了した場合は、「休職期間満了通知書」を労働者に交付し、退職手続きをとる

それぞれ細かくみていきます。

休職事由に該当したとき

労働者の病気欠勤の日数が、休職事由で定める日数(例えば3か月)に達したら、必ず休職通知書などで休職に該当した旨を労働者に通知する必要があります。

就業規則に書いてあるからといって、休職に入ったことを知らせないまま休職期間が満了して自動退職となった場合、後から「聞いていない」と言われる可能性があります。就業規則にのっとって労働者に都度通知しながら進めていけば、あとでトラブルになっても会社に不利になることはありません。

休職通知書は以下のような文面を参考に、必要な事項を足していきます。

休職中の給与

休職期間中は「ノーワークノーペイの原則」に基づき給与はありません。(就業規則に特段の定めがなければ。)

収入を失った労働者の所得補償については、病気休職であれば健康保険から「傷病手当金」として給与の6割程度が支給されます。毎月、労働者本人が医師に「●●の症状により労務不能」といった証明を受けて、これを会社に渡して会社から傷病手当金を申請します。

傷病手当金を受けられるのは、同一傷病で最大で1年6か月です。

休職中の社会保険料・住民税

休職期間中で給与が無くても、退職しない限り社会保険料はかかり続けます。(社会保険料の免除が認められるのは、産前産後休業または育児休業の期間のみです。)

この間は社会保険料(個人負担分)を天引きする給与が無いので、労働者から振り込んでもらう等の対応が必要です。傷病手当金はあくまで労働者本人に支払われるので、毎月傷病手当金が入金されたら速やかに社会保険料を振り込んでもらうなど、あらかじめ労働者とルールを決めておきます。

住民税についても振り込んでもらうことは可能ですが、休職期間が長引くようであれば労働者に相談のうえ特別徴収(会社が天引きし、本人に代わって納付する方法)から普通徴収(本人が納付書等で納付する方法)に切り替えることを検討します。

休職期間満了が近づいたとき

「休職通知書」で労働者に通知した休職期間が満了してもなお復職できない場合、原則として退職手続きを進めることになります。

この点はすでに通知してはいますが、休職期間満了の時期が近づいてきたら、改めて「休職期間満了通知書」で退職となる旨を労働者に通知します。(目安は1~2週間前までに)

休職期間満了通知書は以下の文例を参考に、状況に合わせたものとします。例えば貸与品の返却を求める場合、これらも文章に入れます。

その後休職期間満了日が過ぎたら、速やかに退職手続きを進めます。

まとめ

今回は休職制度について、概要とともに一連の流れを解説しました。

ただし労働者が休職に入るのは様々な事情が考えられるので、就業規則の規定に沿って機械的に実務を進めるだけでなく、労働者とコミュニケーションをとりながら配慮することが重要です。場合によっては、休職期間を延ばすこともありえます。

今回ご紹介した休職制度の規定例はスタンダードなものですが、休職をめぐって揉めることもあります。例えば、休職制度を適用する場合医師の診断書などを根拠にしますが、中には休職を延々続ける目的で医師と結託して<休職→復帰>を繰り返すようなケースもあり、このような事態に備える規定を設ける場合もあります。

いずれにしても、休職制度の運用には就業規則の規定が根拠となるため、休職事由や休職期間を定める場合は、今回ご紹介したような社会保険料負担なども十分考慮して、あいまいな運用にならないよう就業規則を整備しておくことが重要です。

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